About

本学会について
学会設立趣旨について

 日本ケトン食療法学会設立にあたり、皆様へのご挨拶と設立趣旨についてご説明したいと思います。大阪大学においてケトン食療法を癌患者さんに応用する研究を開始して、早いもので、10年の月日が過ぎようとしています。ここまで、研究を継続することができたことに、改めて関係者の皆様と、ご参加された患者さんに感謝申し上げます。

 近年、ケトン食という言葉をよく目にするようになってきました。一般の方々においては、ダイエットの方法論として、医療関係者においては、難治性てんかんや癌治療における臨床効果の期待で耳にされたことがあるかもしれません。しかし、残念ながら、ケトン食の持つ可能性や臨床効果が正しく理解されているとは言えない状況だと感じています。そういった状況を踏まえて、2018年癌におけるケトン食療法のエビデンス構築、機序の解明を目指し、学会の前身である癌ケトン食研究会を立ち上げました。

 幸いなことに、研究会をスタートさせたことで、十分な成果を得ることができました。2020年に大阪大学で実施された55例の様々な進行癌患者を対象にした癌ケトン食療法の臨床効果を報告することができました。3か月間ケトン食療法を実施した37例の患者のデータを解析したところ、開始1年後には、3例の患者が完全奏効し、7例の患者が部分奏効を示し、生存期間の中央値は32.2(最大:80.1)か月で、3年生存率は44.5%と、当初を大きく上回る臨床効果を示しました(Hagihara et al. Nutrients 2020, https://doi.org/10.3390/nu12051473)。さらに、健常者を対象に、糖質制限食に中鎖脂肪酸配合飲料を用いたケトン体の誘導効果と安全性についても報告することができました(Nakamura et al. Nutrients 2022, https://doi.org/10.3390/nu14061199)。以上の研究成果の進捗を随時発表しながら、研究会は第1回から第3回まで実施され、その他にも様々な癌関係の医療関係者にご登壇頂き、ケトン食療法の認知度の高まりを得ることができました。

 できるだけ、多くの癌患者さんにケトン食療法を役立てて頂くためには、エビデンスを有し、標準化された方法論が必要だと考えて、知財の確立を目指してきました。その結果、最初の1週間糖質10g、2週目から3か月において糖質20g、3か月以降は糖質30gという我々が開発した癌患者向けのケトン食療法の方法論は、2020年6月に米国で、10月にシンガポールで、2022年8月には日本においても特許を取得することができました。我々としては、この方法論を独占したいと考えている訳ではありません。学会を中心に、一定の研修を受けた医療関係者の皆様と共に、日本初の新たなエビデンス構築を目指したいと考えております。

 そして、ケトン食の可能性は、すでにエビデンスが蓄積されているてんかんに加え、パーキンソン病などの神経疾患、認知症など、様々な難治疾患での応用が期待され、それらの疾患でのエビデンス構築もこの学会の設立目的になります。本学会は、ケトン食療法のさらなる可能性を多くの医療関係者の皆様と共有したいと考えております。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

2022年11月1日
日本ケトン食療法学会
理事長 萩原圭祐

理事一覧 (五十音順)

荒尾 晴惠

教授 
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 看護実践開発科学講座

石川 暢久

呼吸器センター長 兼 呼吸器内科 主任部長 
県立広島病院 呼吸器内科

今井 克美

院長 
NHO静岡てんかん・神経医療センター

                    

木島 貴志

主任教授 
兵庫医科大学 医学部 呼吸器・血液内科学

篠山 隆司

教授 
神戸大学大学院医学研究科 外科系講座脳神経外科学分野

                    

佐藤 拓己

教授 
東京工科大学 応用生物学部 アンチエイジングフード研究室

 

高橋 幸利

名誉院長 
独立行政法人 国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター

⾧井 直子

栄養管理室長 
大阪大学医学部附属病院 栄養マネジメント部 栄養管理室

中本 佳代子

所長 
大阪漢方医学振興財団附属診療所

青天目 信

講師 
大阪大学大学院医学系研究科小児科学

萩原 圭祐

特任教授 
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座